変形性股関節症についての素朴な疑問と最新の治療法
キーワード:女性、遺伝、臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん) 、足の長さの違い(脚長差)、先進医療、立体骨モデル
医療生協さいたま 埼玉協同病院
整形外科部長
仁平 高太郎(にへい こうたろう)先生
群馬大学卒業。
慶應義塾大学病院、川崎市立川崎病院、さいたま市立病院、フランス・パリ第6大学病院留学などを経て埼玉協同病院に勤務。
変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)は、脚の付け根(股関節)に痛みを感じるほか、腰やおしり、太もも、ひざなどに痛みを感じるケースもあることをご存知ですか? 痛みの原因が何かを理解し、適切な治療を行うには、専門医による診断が必要です。
今回は、変形性股関節症について、意外と知られていない素朴な疑問や最新の治療法などを、整形外科の先生にお話を伺いました。
変形性股関節症で、股関節以外に痛みを感じることがあるのはなぜ?
どんな人が変形性股関節症になりやすい?
男性よりも女性に多く発症
一般的に、女性に発症する割合が多く、男性の4倍から5倍と言われています。また、遺伝的な素因が変形性股関節症を発症する原因のひとつとなっているという報告もされています。
さらに、子供のころに臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん) をわずらっていた方が、40〜50代になって変形性股関節症を発症するケースが非常に多く見られます。これは、日本人特有の傾向で、二次性関節症と呼ばれます。欧米人の場合は、明らかな原因がなく発症する一次性関節症であるケースが多いです。
どんな症状があるのでしょうか?
長期に渡って、しだいに症状が進行
変形性股関節症は、3年から10年以上の長期スパンで症状が進行します。症状としては、「痛み」と「可動域(かどういき)の制限」の2つが同時に現れ、いずれも軽度から重度へと段階的に進みます。
日常生活の動作の中で痛みを感じ始めるのですが、初期段階では痛みを我慢される方が少なくありません。日常生活に支障が出るほどの痛みになると、人工股関節置換術や骨切り術を行わなければならないケースがほとんどなので、できるだけ早く専門医に相談されたほうが良いでしょう。

変形性股関節症による左右の脚の長さの違いは治りますか?
人工関節を用いた手術で脚長差の調整が可能
左右の脚の長さに違いが生じる原因は、股関節の関節面を覆っている軟骨がすり減ってしまうこと、さらには骨同士が直接こすれ合うなどして骨が変形してしまうため。個人差はありますが、1〜4cm程度の差異が現れます。
一般的に行われるのは、人工股関節置換術です。痛みを除去すると同時に、できるだけ脚長差がなくなるよう手術を行います。これにより、社会復帰後の歩行姿勢も改善されます。
人工股関節の手術をする決心がなかなかつかないのですが…
痛みを我慢して長い間放っておくと、症状が進行することも
人工股関節置換術の手術を行うタイミングは人それぞれですが、生活の中で痛みに耐えられなくなって手術を決断する方が多いですね。しかし、痛みは我慢しなくてもよいのです。股関節に痛みを感じたら、早めに専門医の診断を受けられることをおすすめします。
実際には、患者さんの症状や年齢、体力などを総合的に判断して、患者さんと医師が相談した上で、患者さん自身が手術の決断を行います。自分の身体にメスを入れることに不安を感じる方も少なくないですが、手術の技術進歩により、切開は従来と比べて小さくて済みますし、何よりもそれまで感じていた股関節の痛みが取り除かれたと喜ばれる患者さんもいらっしゃいます。
股関節の変形が激しいと手術が難しいと聞きます
先進医療技術で、手術前に的確なシミュレーションが可能
最新の医療技術では、事前に正確なシミュレーションを行った上で人工股関節置換術を施すことも可能になってきています。「実物大臓器立体モデル(立体骨モデル)による手術支援」と呼ばれるもので、厚生労働省が認定した先進医療技術です。これは、患者さんの骨盤、大腿骨(だいたいこつ)と同じ形の立体骨モデルをつくり、事前にそのモデルを使って手術のシミュレーションを行うというものです。
特に、重度の変形性股関節症の患者さんに有効な方法で、患者さん自身も自分の骨の状態を目で見て理解することができます。そして、私たち医師も、再現された立体骨モデルを使って、最適な人工関節の部材をどの位置にどのように埋め込むかを、あらかじめ確認することができるので、難易度が高い手術でも確実性を向上することが可能になります。
※この技術は、患者さんの希望によって行われます。通常の保険診療の自己負担分に加え、保険外診療費用が必要となります。


変形性股関節症で痛みに悩まされている方にアドバイスを
痛みを我慢せず、早めに専門医の診断を受けましょう
股関節に痛みを感じたら、自分の症状や股関節の状態を把握することが大切です。早期に専門医の的確な診断を受けるようにしましょう。
また、医療技術は日々進歩しています。実際に人工股関節置換術を受けられて、快適な日常生活を送られている方は、多数いらっしゃいます。いたずらに不安を持たず、専門医とよく相談をして、痛みから解放された生活を送っていただきたいですね。
※治療内容や効果は個人によって異なります。患者さんの個々の症状にあわせた治療法については、担当の先生と十分に相談・確認して決定されることをお勧めします。


