再生医療現場レポート
PRP(多血小板血漿)療法は、
治りにくい痛みの治療の新たな選択肢
ドクタープロフィール
博士(医学)(筑波大学)2001年3月神戸大学医学部大学院整形外科修了。1995年神戸大学病院整形外科入局。2001年4月〜2002年3月慈恵会新須磨病院勤務。2002年4月〜2004年5月米国クリーブランドクリニックファンデーション留学。2004年6月〜2006年5月神戸大学病院整形外科勤務。2006年6月愛仁会高槻病院勤務。2007年5月ひろクリニック開設。
日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会脊椎脊髄病医、日本テニス協会兵庫県医事委員、オリックスバッファローズチームドクター、日本整形外科学会、日本リウマチ学会、関節鏡学会、肩関節学会、日本手の外科学会、日本肘関節学会、中部日本整形災害外科学会
エリア
兵庫県
-
CHAPTER 01再生医療の中でも安全性が高い
PRP(多血小板血漿)療法 -
CHAPTER 02治りにくい痛みの改善が
期待できる -
CHAPTER 03スムーズにリハビリに移行し
機能回復・維持を目指すための治療
-
PRP療法はどのような症状の改善が期待できるのですか?
私の経験では、筋や腱が骨に付着する部分の慢性の炎症、いわゆる“付着部炎”による痛みの改善はかなり期待できると思います。例えば、当院でPRP療法を受けたバレーボール・ラグビーの実業団の選手やランナーといったアスリートの治療経過を見ると、同様な激しい運動をする人に多いアキレス腱や膝蓋腱の炎症、ひじの外側上顆炎、テニス肘、内側上顆炎、野球肘、内側側副靭帯損傷といった慢性炎症の改善に非常に向いているという実感があります。
特にアスリートの場合、ステロイド剤の注射は慎重に行う必要があります。ステロイド剤は外傷を伴う急性の炎症による痛みの改善には即効性が期待できます。しかし、ステロイド剤は強い炎症を鎮める反面、組織の新陳代謝を阻害してしまうというデメリットも指摘されているのです。特にアキレス腱や膝蓋腱にステロイド剤を使うと組織が傷んで、アキレス腱断裂や腱の損傷を二次的に引き起こすことが報告されています。そうしたリスクを考えると、安全に炎症を改善して組織の修復を促していくPRP療法は、アスリートに向いている治療法だと思います。さらに、最近は変形性膝関節症のひざ関節へのPRP療法も始まっています。
変形性膝関節症のひざの痛みの改善にもPRP療法が期待できるのですか?そうですね。ただ、変形性膝関節症などの関節へのPRP療法は、もう少し治療実績を重ねていく必要があると感じています。それは、関節の構造が関係しています。付着部炎は狭い範囲で起きているので、患部に集中的にPRPを投与することができます。それに比べると関節内部は関節包という広い空間になっているのでどうしても拡散してしまいます。付着部炎と同等の改善を求めようとすると、複数回のPRPの投与が必要になる場合があります。
そのため、慢性の付着部炎や靭帯の炎症による痛みはかなり早く改善することが多いのですが、関節炎の場合は2〜3週間かけて徐々に痛みが改善していくことが多いのです。PRP療法は、患部の組織を傷めることなく炎症を改善して、ゆっくりと組織の修復を促していくというところに意味があると考えています。患者さんの心構えとしては、そのあたりを納得した上で治療を受けることが大切だと思います。
この記事が気に入ったら
いいね ! しよう