再生医療現場レポート
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手術を受けるタイミングだということがわかっていても、仕事やご家族の介護などがあり、今は難しいという人は少なくありません。再生医療のPRP療法・APS療法は、保存療法と手術療法の間をつなぐ新しい治療法として注目されています。今回は変形性膝関節症の治療に期待が高まっているAPS療法を中心に、横浜町田関節脊椎病院の宮島先生へお話を伺いました。
膝が痛む主な原因は何ですか?中高年の膝痛の主な原因は、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)によるものです。変形性膝関節症では、膝関節でクッションのような役割をしている軟骨(なんこつ)がすり減ることによって、関節の中の滑膜(かつまく)という組織に炎症が起きたり、炎症によって軟骨を守るための関節液が異常に増えて腫れてしまったり、骨同士がこすれ合ったりするために痛みが起こり、やがて関節の変形も進んでいきます。
本来、軟骨というのはみずみずしく弾力があるもので、それによって痛みなくスムーズに膝が動く仕組みになっています。ところが、軟骨は加齢によって変性し傷つきやすくなるため、年を重ねるほど摩耗しやすくなります。中高年になって膝が痛む人が増えるのは、変形性膝関節症の発症が老化と深く関係しているからです。膝の治療で受けられる再生医療について教えてください変形性膝関節症に対する再生医療として、自費診療にはなりますがご自身の血液を使うPRP療法・APS療法、ご自身の脂肪細胞から取り出した幹細胞を使う培養幹細胞治療(ばいようかんさいぼうちりょう)があります。
その他に、外傷性軟骨欠損症(がいしょうせいなんこつけっそんしょう)や離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)という疾患に対して、ご自身の軟骨を体外で培養し、それを軟骨が欠損した部分に移植する自家培養軟骨移植術(じかんばいようなんこついしょくじゅつ)という保険適応の治療もあります。
施術方法や治療にかかる日数などは治療によってそれぞれ違います。また、保険適応外の治療については費用が施設によって異なりますので事前に確認されることをお勧めします。再生医療は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、厚生労働省への届出が受理された施設で受けることができます。自家培養軟骨移植術
PRP療法・APS療法とは、どんな治療法ですか?靭帯損傷
再生医療というのは、人間誰にでも備わっている“自然治癒力”によって病気やケガを治していく治療法です。PRP療法は、患者さん自身の血液を採取した後に専用キットを用いて遠心分離を行い、血小板を多く含む成分を取り出し、この濃縮された成分であるPRP(Platelet Rich Plasma=多血小板血漿)を注射器で患部に注入する治療です。例えば、切り傷を負っても自然に治っていくように、血小板には傷んだ組織を修復するはたらきがあります。この自然に治る力を利用してプロアスリートのケガ治療などにも取り入れられてきました。
APS療法は、このPRPにさらに脱水・濃縮というもう一工程を加えることで、炎症を抑える物質と組織を修復する成長因子のはたらきを高めたAPS(Autologous Protein Solution=自己タンパク質溶液)を患部に注入する治療です。特に、変形性膝関節症が半月板(はんげつばん)や靭帯(じんたい)などの軟部組織の損傷や滑膜の炎症から起きているようなときに、APS療法は新しい治療選択肢として期待されています。
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