再生医療現場レポート
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CHAPTER 01手術が不要で、体への負担が少ないPRP・APS療法とは
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CHAPTER 02APS療法で期待される変形性関節症の痛みを和らげる効果
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CHAPTER 03膝のより良い状態を保つため、APS療法後もリハビリの継続を
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APS療法を受けるのに適したタイミングとは?
タイミングを言うのは難しいところではあります。変形性膝関節症は、重症度をグレードⅠからグレードⅣまでに分けて考えますが、あまり症状が進んでいないグレードⅠ、Ⅱの方がAPS療法による効果が期待しやすいという海外のデータがあります。ただ、実際、日本では多くの患者さんが「膝の痛みがかなり強くなってから整形外科を訪ねる」状況であり、病状の進行した患者さんが「手術にはどうしても抵抗があるが、何とか痛みを取れないか」とAPS療法を選ぶ傾向にあるため(外傷性の軟骨損傷は別として)、現状ではグレードⅢ、Ⅳの患者さんが多く受ける治療法となっています。
これはAPS療法に限った話ではないのですが、変形性関節症では「もっと早く治療を始めていれば進行を抑えられたのに…」というケースが相当にあります。痛みを我慢せず、早めに専門医を訪ねることを心がけてください。変形性膝関節症5段階
治療を受けるにあたり踏まえておくべきことはありますか?PRP・APS療法は、厚生労働省が定める再生医療法(再生医療等の安全性の確保等に関する法律)のもと認可された施設でしか治療を受けることができず、現在のところ自由診療となっており、費用は全額自己負担となっています。
再生医療への注目は近年大変高まっており、メディアでも多く報道されているだけに、治療に強い期待を持つ患者さんは多いと思います。しかし、過度な期待は禁物です。PRP、APS 療法を受けた患者さんの中には、確かに良くなる方もいますが、すべての人に必ず効果がある治療法とは限りません。また効果があった場合でも、それが永遠に続くわけではなく、場合によっては将来手術の必要性が出てくる可能性もあります。このように同じ症状に悩む他の人に効いても、自分が効果を得られるかどうかは分からないという点を理解し、医師とよく話し合って納得した上で受けることが大切です。
APS療法を受ける上で何か制限はありますか?がん治療中の方やリウマチなど膠原病の方には効果が得られにくいといわれています。また、全身のコントロールが悪い糖尿病の患者さんは、感染症のリスクが高まるため避けた方が良いでしょう。それ以外でも、風邪を引いて熱があるなど体調不良のときは控えたほうが良いでしょう。この治療は少しぐらい遅らせたところで何ら問題があるものではありません。予約をしているからといって体調が悪いときに無理をして受ける必要はなく、医療機関に連絡して日を変えてもらいましょう。
なお、両足で変形性膝関節症が進んでいて、同時に治療を受けたいという方も中にはいますが、できるだけ片足ずつにすることを勧めています。APS注入による反応で、もし両足ともに痛みが強く出た場合、落ち着くまで生活に支障が出てしまうことがあります。また血小板機能を抑制する痛み止めは、現状では控えてもらっています。変形性関節症では、APS療法でどのような効果が期待できますか?APS療法を受けることで、保存療法では取れにくかった痛みを軽減できる可能性があります。今までヒアルロン酸注射を繰り返し受けてきたものの、思うような効果が得られなかった方などには新たな選択肢となるでしょう。通常の痛み止めとは異なり、単に炎症を抑えて痛みを和らげるだけではなく、APSは軟骨を保護する効果を期待できるのも大きな特長です。
効果の現れ方は人によってまちまちですが、早い方では2週間ほどで変化を感じ始めるようです。ただ、非常に個人差が大きく、2~3カ月経ってようやく効果を感じられたという患者さんがいれば、治療を受けたものの改善したかどうか違いが分からないという方も一定割合でいます。痛みについては定量的に表すのが難しく、本人に改善の自覚はなくとも、家族など周囲から「良くなったように見える」と言われて気づくこともあるようです。
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