再生医療現場レポート
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CHAPTER 01手指の変形性関節症に大きく影響する女性ホルモン(エストロゲン)の減少
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CHAPTER 02自分の血液から作る「PRP療法」と「APS療法」
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CHAPTER 03手の専門医とよく相談し自分に合った治療法を選択しよう
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保存療法を行っても期待するほどの効果がないものの、手術には踏み切れず、痛みをがまんしている変形性関節症の患者さんは多いといわれています。これに対し、近年、新たな治療選択肢として効果が期待されているのが、再生医療のAPS療法です。今回は主に手指の変形性関節症を中心に、その原因や治療法、APS療法の可能性について、興生総合病院副院長の河野正明先生にお話をうかがいました。
手指の変形性関節症とはどのような疾患ですか?ヘバーデン結節とは?他の関節と同様、手指の関節にも、骨同士の衝突を防ぐためにクッションの役割を果たす軟骨があります。この軟骨がすり減って骨同士が摩擦を繰り返すことで炎症が起こり、腫れや痛み、変形を生じるのが手指の変形性関節症です。40歳以降の女性に多く、高齢になるほど発症率は高くなります。医療機関を受診される年代で多いのは主に60代です。手にはさまざまな関節がありますが、親指の付け根にある「母指CM関節」や、指の第一関節・第二関節に発症しやすく、第一関節に生じたものは「ヘバーデン結節」、第二関節に生じたものは「ブシャール結節」と呼ばれています。
ヘバーデン結節は別名「指曲がり症」とも呼ばれ、指が曲がったまま伸びなくなり、痛みや可動域制限で日常生活に大きく支障をきたすことも。関節の背側に二つのコブ(結節)ができるのが特徴で、膝に水がたまるのと同じ様に、爪との間に水膨れ(粘液嚢腫) ができることがあります。手指の変形は、女性ホルモンが関係しているのですか?ヘバーデン結節のレントゲンと外観
女性ホルモンの一つである「エストロゲン(卵胞ホルモン)」との関係が指摘されています。エストロゲンには手の腱のまわりを包んでいる部分
(腱鞘) や関節の内側をおおう膜(滑膜) に水がたまったり、むくんだりするのを抑制する作用がありますが、その分泌量は40歳以降急激に減少していきます。そのために、腱鞘炎を起こしたり関節が破壊されたりするといわれているのです。
近年、大豆イソフラボンと腸内細菌によって作られるエクオールという物質が、エストロゲンと同じ作用をすると注目されていますが、日本人の半分以上はこのエクオールを体内で作ることができません。手指の変形性関節症は遺伝性があるのではないかといわれていますが、それはエクオールを生成できない体質が遺伝している可能性もあります。身内に発症者がいる場合は、予防のためにも早めにサプリメントなどで補充しておくといいかもしれません。ヘバーデン結節や手指の疾患の治療法を教えてくださいヘバーデン結節の
スクリュー固定母指CM関節の
テーピングまずは、消炎鎮痛効果のある湿布薬や塗り薬、飲み薬を使って炎症と痛みを抑えていきます。また、テーピングや装具で患部を固定することで痛みの軽減や変形の矯正を図ります。母指CM関節の場合、夜間だけの装具装着でも日中の痛みが軽減するといわれています。こういった保存療法を続けても痛みが改善されず、変形がひどくなって日常生活に支障をきたすようになると手術が検討されます。ヘバーデン結節には、スクリューで関節を固定する手術が多く行われ、除痛とゴツゴツした感じがなくなることで喜ばれていますが、術後の指先は伸びたままになります。それに対し、変形した骨を整え関節包を治療する手術(関節形成術)では、痛みの改善だけでなく、第一関節の曲げ伸ばしの機能を残すことができます。手術を受ける場合は医師とよく相談して決めるといいでしょう。
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