再生医療現場レポート
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最近耳にする機会が増えてきた再生医療。整形外科の分野でも、血液に含まれる血小板の「自己治癒力」を使ったAPS療法が、変形性膝関節症などの新たな治療法として国内でも徐々に広がりつつあります。とはいえ、まだ歴史の浅い治療法であり、過度な期待は禁物です。膝の痛みの原因やさまざまな治療法と、その中でのAPS療法の位置づけ、期待される効果などについて、本庄総合病院の鈴木先生にお話を伺いました。
膝が痛むときの主な原因は何でしょうか?膝の痛みで代表的なのは、加齢に伴って軟骨がすり減ってくる変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)です。多くの場合、立ち上がるときや歩行時、階段の上り下りなどの痛みとして症状が現れてきます。日本人はO脚の人が多いので、膝の内側が痛むケースが大半を占めます。
それ以外では、軽い外傷(がいしょう)などにともなう膝の軟骨下骨折(なんこつかこっせつ)が原因と考えられる特発性骨壊死(とくはつせいこつえし)や、膠原病(こうげんびょう)のひとつとして膝関節に炎症(えんしょう)を引き起こす関節リウマチといった病気も考えられます。膝の水を抜くとクセになるのですか?水を抜くからクセになるという
わけではありません。変形性膝関節症では「膝に水が溜まる」という人も多いと思います。これは、膝の中で滑膜(かつまく)(関節包(かんせつほう)を覆っている薄い膜状の組織)が炎症(えんしょう)を起こす滑膜炎(かつまくえん)に起因するものです。滑膜は、もともと関節液をつくって膝の潤滑な動きを支えていますが、炎症によりこの働きが過剰になったのが、膝に水が溜まった状態です。変形性膝関節症ですり減った軟骨(なんこつ)が滑膜に取り込まれ、それに刺激されるのが滑膜炎の主な原因とされています。
膝に水が溜まって痛みがある、曲げ伸ばししにくいという場合は水を抜くことになりますが、しばしば言われる「一度水を抜くとクセになる」は正しくありません。膝に水が溜まるのは膝関節の悪い状態がずっと続いているのが原因なので、水を抜くからクセになるというわけではないのです。変形性膝関節症ではどのような治療法が考えられますか?足底板
変形性膝関節症の初期から末期までのどのステージであっても、まずは保存療法から始めるのが一般的です。膝に負担がかからないよう体重を落としたり、膝の安定性を高める太ももを中心とした筋力トレーニングを行います。痛みを和らげるために、外用剤や内服薬、ヒアルロン酸やステロイドの関節内注射を用いることも多いでしょう。人によってはサポーターや足底板(そくていばん)などの装具療法(そうぐりょうほう)で症状が軽くなることもあります。
このような治療を続けても痛みが強くてつらいという場合は、患者さんとよく相談しながら骨切り術(こつきりじゅつ)や人工膝関節(じんこうひざかんせつ)の手術を検討します。ただ、「手術はなんとなく怖い」「家族を残して入院はできない」という患者さんは少なくなく、本来なら手術の適応と考えられる人でもなかなか踏み切れないでいる印象を受けます。
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