再生医療現場レポート
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CHAPTER 01変形性膝関節症のさまざまな治療法
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CHAPTER 02軟骨を再生するのではなく、炎症にはたらきかけるAPS療法
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CHAPTER 03自分の症状にあった適切な治療選択を行いましょう
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APS療法について教えてください
APS療法は変形性膝関節症など関節内の炎症に対する治療として期待されています。関節内で炎症を引き起こす悪いタンパク質の活動を抑制する「抗炎症サイトカイン」という良いタンパク質を増幅させて、炎症のバランスを調整して改善を目指すものです。ただし、APS療法を受けることで軟骨が再生するわけではありません。そのため患者さんは、例えば変形性膝関節症のグレード2か3、つまり軟骨がまだ残っていることが条件と考えて良いでしょう。年齢とともにO脚になり、膝関節に強い力がかかることで軟骨の摩耗が進んだグレード4以上になると、手術を中心に検討することになります。
APS療法はどのような状況の人に適していますか?まずは保存療法をしっかり継続し、数カ月経っても思うような効果が出ないときは、APS療法の治療選択肢について説明します。前述したように膝であれば変形がグレード2か3である患者さんが適応すると考えられていますが、その中でも、仕事の関係で定年までなんとか手術をしないで保存療法でいきたいという50代前半の人や、親の介護中なので手術・入院の時間が取れないといった人のご希望が多いようです。白血病や関節リウマチなど、持病によってはAPS療法が受けられないケースはありますが、膝を切開することもなく身体に負担が少ない治療で、年齢制限はありません。90歳を越えていても受けることができます。ただし、膝の変形が進んでいると年齢に関わりなく手術の方が適している場合があるので、医師とよくご相談ください。
変形性膝関節症5段階
APS療法のメリットはなんですか。合併症はありますか?PRP・APS療法に関しては、自分の血液を使うため合併症のリスクは低いといわれています。注射を行う際に感染のリスクがありますが、一般的な注射の治療と同じ程度です。手術の場合には感染症のリスクがあり、糖尿病の患者さんだと血糖値のコントロールをしていただくなど注意が必要なこともあります。持病があって手術を受けるのが難しい人にとってPRP・APS療法は検討しやすい治療といえるかもしれません。また、血液が身体にとって異物ではないということは、アレルギー反応や拒絶反応が起きないということでもあり、副作用のリスクが低いこと、入院の必要がなく外来の短時間で済むことも特徴です。
ただし、摩耗した軟骨が元通りに再生されるわけではありません。あくまでも炎症のバランスを調整する効果が期待されている治療です。そのため、軟骨の摩耗が進んでいけば、いずれ手術が必要になる可能性があるということを知っておいていただきたいと思います。
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