再生医療現場レポート
ご自身の血液を使うAPS療法
治りにくい痛みの新たな治療として期待されています
ドクタープロフィール
所属学会:日本整形外科学会、日本関節鏡膝スポーツ整形外科学会(JOSKAS)、日本整形外科スポーツ医学会、日本臨床スポーツ医学会、日本肩関節学会、中部日本整形外科・災害外科学会(評議員)、膝関節フォーラム(世話人)、京都整形外科懇話会(世話人)、International
Cartilage Repair Society
資格・認定医:日本整形外科学会認定
整形外科専門医、日本スポーツ協会認定 スポーツドクター、The
American Journal of Sports MedicineのPrincipal Reviewer、The
Orthopaedic Journal of Sports Medicine のEditorial Board
エリア
京都府
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CHAPTER 01変形性膝関節症の治療、PRP療法とAPS療法
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CHAPTER 02APS療法前に知っておいて欲しいことと治療のタイミング
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CHAPTER 03APS療法を複数回受けることで期待される効果や治療後の注意点
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従来の治療を行っても変形性膝関節症の症状が改善しない場合、新たな治療としてAPS療法が期待されています。これまでの保存療法や手術だけでなく、再生医療を含め、ご自身の状況や状態に合わせた治療方法が選択しやすくなってきているようです。京都下鴨病院院長の小林雅彦先生に、注目されるAPS療法前に知っておいて欲しいことと治療のタイミングなどについてお話をうかがいました。
変形性膝関節症の治療を受ける際に、知っておいたほうが良いことはありますか?変形性膝関節症は、徐々に軟骨がすり減り骨が変形し、ゆっくりですが進行してく疾患です。治療には保存療法や手術、再生医療などがありますが、どんな治療を行っても、正常な状態に戻すことはできません。いずれの治療も、症状の改善が期待できますが脚の変形は変わらず、脚の変形が改善したとしても人工物が入ることになります。どのような治療を行っても、必ずしも、若返りの治療ではないので、そのことを良くご理解いただきたいと思います。色々な治療の特徴を理解し納得いただいた上で、どの治療を選択するかを決めていただき、もしも効果がみられなかった場合は、患者さんと相談して新たな治療方針を決めてくことが大事だと思います。
受診を中断すると悪影響になることはありますか?始めの頃は病院に行っていたけれども、症状があまり改善しないので、行っても行かなくても一緒だと感じる方もおられると思います。そうすると、病院に行かずに、ご自身で湿布を貼るなど自己流の治療を続けるようになるかもしれません。ところが、間違った治療を続けると、痛みが改善せず、外出が減り動かないでいると筋力が落ちてしまいます。そうすると、気が付いた時には、末期の状態になっているだけでなく、廃用症候群と言って、長期間しっかり動かない状態が続くことが原因で、身体機能が大幅に低下するだけでなく、精神的にも影響を与える悪循環に陥ることがあります。軟骨が損傷し始める段階では、症状を感じることがほとんどありません。しかし、違和感くらいの症状を見過ごしていると、変形が進行していき、ご自身の関節を温存することが難しくなる方が多くおられます。ちょっと気になるような症状があれば、我慢せずに怖がらずに整形外科を受診して欲しいと思います。
PRP療法やAPS療法について教えてくださいPRPは、一般的には多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)と呼ばれ、血液を遠心分離して採取する血小板を多量に含んだ血漿のことです。血小板には、組織の修復を促す成長因子を出す働きがあり、ご自身がもともと持っている修復力を引き出すことが期待できる治療です。APSは、そのPRPを精製し、再度特殊なキットを使用し遠心分離させることで、炎症を抑えるタンパク質と、軟骨の良好な状態を維持する成長因子を高濃度に抽出したものです。PRP療法は、テニス肘やアキレス腱炎、肉離れや筋挫傷などスポーツや生活習慣に関連した腱や筋肉の損傷などの治療として効果が期待されています。また、APS療法は、変形性関節症に対しての治療効果が期待されており、その中でも変形性膝関節症の方に治療されることが多いです。
APS療法の流れ
APS療法が登場し、今後どのようなことが期待できるでしょうか?これまで変形性膝関節症の治療には、痛み止め薬の使用や運動療法、ヒアルロン酸やステロイドの注射といった保存療法で効果がみられない場合は、手術という選択肢しかありませんでした。しかし、現在では、APS療法という新たな選択肢が加わり、治療の選択肢が増えました。生物学的膝再建(Biological Knee Reconstruction)という人工物を入れずに、自分の骨と軟骨を残し、膝関節を温存するという考え方もでてきています。将来的には、APS療法や自家培養軟骨移植術、手術など様々な治療法を組合せ、より効果的な治療が行えるようになるのではないかと期待しています。
自家培養軟骨移植術
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