再生医療現場レポート

• CHAPTER 01
  変形性膝関節症の治療、PRP療法とAPS療法
• CHAPTER 02
  APS療法前に知っておいて欲しいことと治療のタイミング
• CHAPTER 03
  APS療法を複数回受けることで期待される効果や治療後の注意点

• APS療法を受ける前に知っておいたほうが良いことはありますか?

  ステロイドを使用されている方が、その使用を中断できない場合や、がんの治療を受けている方もAPS療法を受けることができません。APS 療法は再生医療の一つということで、軟骨の再生を期待されている方が圧倒的に多くおられます。しかし、手術によって軟骨を移植し再生させるほど軟骨の修復は期待できません。APS療法によって炎症が和らぎ痛みが軽減すると、膝にたまっている水が減ったり、違和感が取れたり曲げやすくなるなど様々な効果が期待されます。万能薬のような形としてとらえている方もおられますが、治療効果は人それぞれで、現在は健康保険が適応されない全額自己負担となる自由診療です。

  PRP療法やAPS療法は安心して受けられる治療なのでしょうか?

  PRP療法やAPS療法は、再生医療法（再生医療等の安全性確保等に関する法律）のもと、厚生労働省へ届け出が受理された施設で行われています。細菌などが混入しないよう、清潔できちんと管理された場所で加工する必要があるので、そのような状況で行われているのは患者さんの安心感にもなると思います。
  多くの患者さんが、PRP療法やAPS療法はご自身の血液を使うことに安心感を持たれています。例えば、臓器移植は一般的には他人から臓器を移植するため、拒絶反応が起こることがあります。また、自家培養軟骨移植は、手術によってご自身の軟骨片を採取し、それを培養し4週間後くらいに改めて手術を行い移植します。ご自身の軟骨を使用するものではありますが、2回手術が必要になり、初回の手術から4週間程度時間が必要になります。APS療法は、採血から注入まで1時間程度で終えられ、身体への負担が少ない治療です。

  どのようなタイミングでAPS療法を検討したほうが良いでしょうか?
  

  ヒアルロン酸注射

  変形性膝関節症と診断され、痛み止め薬の使用やヒアルロン酸注射、運動療法や減量などの保存療法を2～3ケ月しっかり行ってもなかなか効果がみられない方は、APS療法を検討してみても良いと思います。さらに、変形が末期で保存療法をし尽くしても症状が改善せず、手術に抵抗がある場合は、一度APS療法を受けてみて、それでも除痛が得られない場合は、人工関節の手術を考えてみるという選択もあると思います。また、お仕事などの都合で、入院やリハビリなどに十分な時間を確保できず、時間をできるだけかけずに症状の改善を目指したい方がAPS療法を希望されることもあります。保存療法を十分に行っても痛みが軽減せず手術を勧められていたとしても、正座ができるくらい膝を曲げられ脚の変形もそれほどきつくなく、30～40分は歩けるという方であれば、手術ではなくAPS療法を考えてみても良いと思います。

  どのような場合、手術を検討したほうが良いでしょうか?

  膝の曲げ伸ばしは問題ないけれども、痛みのせいで、スポーツを続けにくくなっていたり、社会活動に制限が出ていたりしている、O脚やX脚になっている50代～60代の方であれば、骨（こつ）切り術が適応だと思います。O脚やX脚は、膝の内側もしくは外側に過度な負荷がかかっている状態です。そのためAPS療法を行い、一時的に痛みや炎症が和らいだとしても、骨切り術で脚の形を矯正し負荷がかかる部分を変えないと、長期的な痛みの軽減効果が期待しにくいのです。
  関節の隙間がかなり狭くなっていると、APS療法の効果が期待できないとの報告があります。そのため、高齢の方で関節の隙間がほとんどなくなり、5～10分程度歩くと痛みが出たり、しゃがみ込みや正座ができないくらい膝の動きが悪くなっていたりすれば、膝関節を人工関節に置き換える手術を考えてみても良いと思います。