再生医療現場レポート
保存療法では効果がない、手術は受けたくない
変形性膝関節症の第3の治療として
APS療法が期待されています
ドクタープロフィール
日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医、指導医、日本骨粗鬆症学会認定医、日本骨折治療学会評議員、Japanese Association for Biological Osteosynthesis:JABO 世話人、日本CAOS(Computer Assisted Orthopaedic Surgery:コンピュータ支援整形外科)研究会世話人 北九州外傷研究会代表世話人
エリア
福岡県
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「PRP療法」についてお教えください
PRP(多血小板血漿)療法イメージ
血液は「血漿(けっしょう)」「白血球」「血小板」「赤血球」という4つの成分で構成されています。PRP療法は、まず患者さんご自身の血液を採血しそれを1回遠心分離し、血液から、「バフィー・コート」と呼ばれる「白血球」や「血小板」を含む多血小板血漿(PRP)を採り出し、患部に注射します。血小板には、傷口を止血する働き以外にも、成長因子を放出して組織を修復したり増幅したりする働きがあり、PRP療法は、この血小板の働きを利用して、筋や腱といった組織の修復を促進することが期待されている方法です。
多くの方が、「プロスポーツ選手がPRP療法でケガを治して復帰した」というニュースをご覧になったことがあると思います。このようなプロスポーツ選手のケースでは、従来の治療法と比較して、約半分程度の日数で復帰を果たすことができたと報告され、PRP療法は「侵襲が少なく」「早期社会復帰が可能」とうことも期待されています。「APS療法」についてお教えください。プロスポーツなど特別な環境の方だけではなく、変形性膝関節症をはじめ、関節の疾患に悩む多くの方に対して、「次世代PRP」と言われるAPS(Autologous Protein Solution:自己タンパク質溶液)療法が期待されています。PRPが1回の遠心分離に対し、APS療法は特殊な器具を用いて2回の遠心分離を行い、ご自身の血液から高濃度の抗炎症性サイトカインと成長因子を含むAPSを採り出し膝に注入します。
APS療法は、変形性膝関節症の痛みの原因である炎症のバランスを改善することで痛みを軽くし、軟骨の変性や破壊を抑えることが期待されている治療です。ご自分の血液を使うので副作用がほとんどなく、従来の「鎮痛剤やヒアルロン酸注射などの保存療法」と「手術」に次ぐ「第3の治療」と言われ期待されています。APS療法の流れ
APS療法はどのような方に効果が期待できるでしょうか?変形性膝関節症においては、進行の程度がグレードⅡ~Ⅲの方で、薬物療法は副作用も心配だし効果にも満足できていない、しかし、できれば手術をしたくないという方や、ご高齢だったり持病があったりして、手術が難しいという方にも新たな選択肢として期待されています。
実際の臨床の場では、APS療法を受けて効果がみられないようであれば「手術を受ける」という方や、APS療法の説明を聞いた上で、「より除痛効果が期待できる手術」を選ぶ方もおられます。APS療法の治療時間や効果はどれくらい続くものですか?自身の血液を採血して2回遠心分離機にかけたAPSを膝に注射する、という行程はほぼ1時間で終わるので、入院の必要はなく、その日のうちに自宅に帰ることができます。
効果が持続する期間は人それぞれですが、経験として半年~1年ぐらい持続している印象があります。効果が薄れてきたと感じた場合は、「再度APS療法を行う」「手術を受ける」「そのまま様子を見る」など、次の治療選択を決めていくことになります。
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