再生医療現場レポート
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CHAPTER 01膝が痛いけれど、仕事や運動を続けたい方に期待されるAPS療法
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CHAPTER 02変形性膝関節症が重症化する前に期待されるAPS療法
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CHAPTER 03膝の痛みを改善するための投資という考え方も
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歩くたびに膝が痛んで、思うように活動できない。そんな悩みを抱える方は少なくありません。その原因として最も多い疾患が、加齢とともに膝の軟骨がすり減って痛みが出る「変形性膝関節症」です。その痛みや関節内の炎症を抑える新しい治療法として、「APS療法」が期待されています。APS療法の詳細について、中山クリニックの中山潤一先生に伺いました。
変形性膝関節症の原因や治療にはどのようなものがありますか?膝が痛くなる原因として、スポーツなどによる半月板損傷や、特発性の骨壊死(こつえし)のように急に痛みなどの症状が現れるケースもあります。しかし、中高年世代で最も多いのは、加齢によって軟骨がすり減って痛みが出てしまう「変形性膝関節症」です。何年もかけて徐々に軟骨の摩耗や骨の変形が進んでいくため、徐々に痛みが強くなったり、思うように動けなくなったりすることもあります。
変形性膝関節症の方には、まずは外科的治療でない保存療法を行います。痛みが出ていれば鎮痛剤を使用いただき、筋力トレーニングやストレッチなどのリハビリによって膝関節の安定性を確保するとともに、靴の指導や足底板(そくていばん)という靴のインソールの作成をアドバイスしたりします。また、肥満の方には体重のコントロールを勧め、ヒアルロン酸の関節注射を行うなど、色々な治療を組み合わせていくことで症状が改善される方が多くおられます。変形性膝関節症の手術療法について教えてください骨切り術
保存療法を続けても症状が改善しない場合は、傷んだ半月板などを取り除く関節鏡視下手術を行ったり、症状がかなり進んでいる場合は、すねの骨を切り膝関節に荷重がかかる場所を矯正する骨切り術を行ったり、傷んだ関節を人工関節に置き換える人工膝関節置換術を行ったりすることがあります。
最近は高齢になられても仕事を続けていたり、テニスやゴルフ、登山などアクティブな活動を楽しまれていたりする方が増えています。変形性膝関節症の患者さんが、こういった活動を続けて行きたい場合は、できるだけご自身の関節を温存できる骨切術を適用することが多いです。しかし、骨切り術を受けると骨が癒合するまでの一定期間は歩行などの活動が制限されるので、仕事や家庭の事情などでなかなか手術に踏み切れない方が多くおられます。そのような高い活動性を求めている方に対して、新しい治療法として「APS(自己タンパク質溶液)療法」と呼ばれる再生医療が注目されています。「PRP療法」と「APS療法」の違いについて教えてください膝関節内には「サイトカイン」という低分子の生理活性タンパク質があります。大きく分けると、炎症を引き起こすサイトカイン(炎症性サイトカイン)と、炎症を抑えるサイトカイン(抗炎症性サイトカイン)の2種類があります。正常な状態では両者のバランスが保たれているのですが、変形性膝関節症の膝関節内では、炎症性サイトカインが優位に活性化しているので、痛みが出るだけでなく関節軟骨の破壊も進んでいきます。PRP(多血小板血漿)というのは、ご自分の血液を遠心分離して、その中から血小板に含まれる成長因子と呼ばれるサイトカインを多く含んだものです。この成長因子は、傷の治りなどを促進する働きがあるので、「PRP療法」はこの働きを利用した治療として期待されています。一方の「APS療法」は、このPRPをさらに遠心分離や脱水処理などを行って、成長因子だけでなく炎症を抑制する抗炎症性サイトカインを高濃度に含むので、関節内の炎症を抑えることで痛みを軽減させ、軟骨の損傷が進まないよう予防することも期待されています。
APS療法の流れ
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