再生医療現場レポート
-
CHAPTER 01再生医療とは「細胞治療」
-
CHAPTER 02整形外科の再生医療とは
-
CHAPTER 03PRP(多血小板血漿)療法とは
-
CHAPTER 04整形外科分野の再生医療の今後の展望
-
整形外科の「再生医療」とはどのようなものでしょうか?
腸骨移植術
整形外科の分野では、骨折の治療がわかりやすいと思います。多くの骨折は、骨同士のズレを整復し、ギプスなどによって固定するだけで元どおりに骨がつきます。これは、骨独自の再生能力によって、骨自体を修復することができるからです。整形外科医は整復や手術によってこうしたからだ本来の再生を手助けしていますので、広義の意味で、再生医療の範疇に入ると思っています。
一方で、骨折の中には、疫学的に5~10%の割合で、ギプスや手術で固定しても骨がつかなかったり、その他いくつかの要因によって骨がうまく再生されずに、本来動くべきでない箇所がぐらぐら動いてしまう「偽関節」という状態になることがあります。
偽関節の治療法には、患者さん自身の骨盤から「腸骨」の一部を採り、そのまま欠損部に移植する「腸骨移植術」があります。ただし、採取できる腸骨の量に限界があるため、大きな骨欠損の場合は、骨のもとになる幹細胞を骨髄から採り出し、体外で人為的に培養してから移植して再生を促すという細胞移植があります。後者は、まさに細胞治療による再生医療です。整形外科分野での「細胞治療」には、他にどのようなものがありますか?整形外科の分野には、一つ「関節軟骨の再生」という大きなテーマがあり、私も研究してきました。そもそも軟骨には血液が通っていないので軟骨細胞に栄養が運ばれることがなく、「一度損傷したら再生しない」というのが常識になっているからです。
しかし、培養技術の進歩で可能になった人工的に培養した軟骨細胞を用いた「軟骨損傷」の治療法があり、現在、膝関節における外傷性軟骨欠損症または離断性骨軟骨炎(変形性関節症を除く)について保険診療で行える治療になっています(※保険診療が適用されるには他にもいくつかの条件があります)。
ただし、現在の自家培養軟骨移植術で修復できるのは、ケガなどによる限局的な関節軟骨の欠損であって、骨の変形をともなう変形性関節症などの治療としては、他にもまだまだ課題があるわけです。ところで、軟骨の再生に、グルコサミンやコンドロイチンといったサプリメントの服用やヒアルロン酸注射は期待できるのでしょうか?ヒアルロン酸注射
結論から言うと、サプリメントに軟骨の再生促進や痛みの改善などの働きは、医学的には立証されていません。結局、軟骨には血流がないので、口からそうした栄養分をとり入れても、軟骨まで届かないのです。あくまでも健康補助食品ですから、患者さんには飲んだ感触とお財布と相談しながら、飲みたければどうぞという話をしています。
ヒアルロン酸注射については、実は、まだよくわかっていない部分が多いのですが、いわゆる関節の潤滑油のような働きとともに、軟骨の保護作用や痛み、炎症の改善を期待し、標準的な治療法の一つとして使用されています。
この記事が気に入ったら
いいね ! しよう