再生医療現場レポート
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CHAPTER 01再生医療とは「細胞治療」
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CHAPTER 02整形外科の再生医療とは
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CHAPTER 03PRP(多血小板血漿)療法とは
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CHAPTER 04整形外科分野の再生医療の今後の展望
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整形外科分野の「再生医療」では、今後、どのようなことが期待できるのでしょうか?
関節軟骨や半月板の再生を目指す研究も進められていますが、関節全体を構造的に再生できるような段階にはありません。例えば、変形性膝関節症では、関節軟骨だけではなく、関節組織が構造的に傷んでいます。O脚があれば、それ自体を治療しなければなりません。つまり、軟骨だけを治療すればいいというものでもないのです。70代、80代の変形性膝関節症の患者さんのひざを、再生医療によって10代のような若いひざに戻せるというわけではありません。
PRP療法については、どのようなことが期待できますか?スポーツ外傷に対するPRP療法の国内臨床試験は、当大学を含めて進んでいます。それ以外の症状についても調製方法や投与の仕方による有効性の違いなどを検証して、日本独自の質の高いPRP療法の確立を目指しています。
PRP療法の質という点では、日本で初めて閉鎖式の血液成分分離キットが臨床(治療)での使用が可能な医療機器として製造販売承認され、2016年に発売されました。血液を分離させる際に外気に触れると、どうしても感染のリスクが高まりますので、閉鎖式で、安全になおかつ再現性を持って必要な成分が分離・抽出できるというのは、非常に大事なことなのです。PRP療法の普及に向けて、日本もやっと準備が整ったのではないかと思っています。最後に、患者さんへのアドバイスをお願いいたします。整形外科の分野は、人工関節への置換を含めて、機能の再建を目指す様々な治療法が確立されており、従来の標準的な治療法で十分、症状の改善が期待できることがあります。
ひざの痛み一つをとっても、原因は、患者さんによって様々ですから、個別の病態に適した治療を選択するのが何よりも重要なことです。情報過多な時代だからこそ、思い込みで判断せずに、自分に合った治療法を見極めていただくことが大切です。
我々医師も、患者さんに良くなってもらいたいという強い思いの中で治療に取り組んでいます。どんな治療法にも患者さんにとって利点とリスクの両方があり、その中でよい結果を追求しています。診療での対話を通じて我々医師を信頼していただき、その上で、よりよい結果が期待できる治療法を患者さんに選択していただきたいと思います。
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